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第二幕までのインターミッション




蜆TuRe二号、いまDockに入っている。
舟の組み立てが遅れたうえに、この季節特有のモンスーンにみまわれている。
Dockの外は〝年末〟という名の大嵐が吹き荒れているのだ。
しかし、それでも舟は出る。

ものをつくるというのは、ひとつの労働であるとおもう。
出来上がったものを見れば、ああ出来上がったかでおわるのだけれども、
つくりあげるまでの工程にはじつに数多くの仕事がかくれているものだ。
ものをつくった経験のある人は、だれもがそのことを知っているだろう。

ぼくがつくるのは、ほんの小さな舟だ。
たとえ小さくても、舟は舟。
舟ならば海に出るだろう。
海に出るからには、途中で難破してしまわないつくりにしておく必要がある。
けっして手を抜けない。
街には出帆を心待ちにしてくれている人がいる。
いい仕事を心がけよう。
出来れば、みんなをわっといわせるような仕事を。

とかなんとか、ぼそぼそとひとりごちながら、ぼくはお茶を濁しているのである。
原稿の仕上がりが大幅に遅れ、頼りのデザイナーは年末の駆け込み需要に振り回され
身動きが取れなくなっている。
さあ、コマッタコマッタ。
といって、焦ったところで出ない舟は出ない。
ここはひとつじっくりといこうではないか。
と、じぶんに言い聞かせて、つい短くなっちゃう気を長くのばしている。

そうだ、先は長い。
アバンチュールは、まだはじまったばかりである。
ぼくはこの航海のなかで、もうすでに小さな挫折をいくつも体験している。
良薬は口に苦し。
効き目は抜群である。
ぼくは、何のために書くのだろう。
その問いに対するひとつの答えを、ぼくは持っている。
読者を得るために書くということ。
迎合ではない。
ひとつの正しさなのだ。
言語は、ぼくの側にあるのではない。
言語はそれを使う人たちの側にある。
ぼくが言語を用いて書くからといって、
その言語をぼくの側に置いておけるとおもうのは大まちがいだ。
言語は、長いあいだそれを使ってきた人たちによって築かれた「歴史」の側にある。
いまもなお。そして、これから先も。
その歴史に対してどれだけひらいていられるか。
それが個人の受け持つ役目だろうとおもう。

頑固なぼくはようやくじぶんのまちがいを認めつつある。
ひと皮むけたのはいいのだが、やけにひりひりしてしかたない。
ひらいた本の活字の並びが、妙に沁みてきたりもする。
わるくない。もっとむけちまえ。





コメント

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みな、地球。

年始に買った築地書館の『土と内臓』(ほんとうにほんとうに面白い本)のおかげで、
幸運なことに、私のなかに微生物への愛が芽生えた。
もともと微生物に愛着はあったけれど、いよいよ全身全霊で愛していこうとおもう次第。

今回の蜆TuRe(第七號)は、海と転生というテーマでひとつ書いてみた。
ちなみに今回はタイトルが長い。
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なによりもまっさきに地球のことを考えたい。どうもこのごろは、そういう心情から離れられなくなりつつある。
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工場日記1

毎朝、9時15分過ぎに工場の門をくぐる。
やれやれ、という感じでいつも。
工場といっても普通のオフィスビルと変わらない。自社ビルの一階がセンターの工場になっている。
タイムカードを押し、裏口から現場に入る。
配送業者が入荷した荷物を台車に積んでいる。
高く積まれたダンボール箱の壁を抜け、作業机の前へ。
荷物を足元に置き、鋏を道具棚から取り出し、
さてさてと手をさすりながら、仕事をとりにいく。
今日出荷予定の荷物の山から個口の大きいものを選び出し、
そいつをよっこらせと持ち上げて、持ち場へつく。
箱をあけ、中身を取り出す。
平均して一箱にだいたい40ヶから50ヶのモノが入っている。
箱の大きさによって異なるが、多いときは70ヶ。数十ヶの場合もある。
さっと検品しながら判型ごとに分けて机に置いていく。
数を数え、記録し終えたら、おもむろに椅子に座る。
ではまいります、と心のなかでつぶやきつつ、鋏を手に取る。
作業開始。
1ヶにつき切るべき箇所は4点。そこへひたすら鋏を入れていく。
切り取られた部位は、残骸となって足元に落ちていく。
鋏はピストル、そして残骸は空の薬莢。
黙々と、かつスピーディーに鋏を入れていく。
一日に何千という総数をさばく必要があるので、おのずとスピードが求められる。
ただ実際のスピードには個人差があり、判型によってもかかる時間は異なる。
私の場合は、だいたい1ヶにつき15秒から20秒といったところか。
4ヶで1分。40ヶで10分。検品に5分。作業後の判型揃えに5分。
一箱当たり、ざっと20分かかる計算である。
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この作業をひたすらつづける。

この4点切りの工程を作業Aとすると、
これとは別に、判型ごとに寸法を取り出す作業Bと、仕上げの工程に当たる作業Cとがある。
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ひと月もすれば、作業Cをさせてもらえるようになるようだ。
難易度は、ABCの順にあ…

SPICE IS THE PLACE!

このごろ、おれの精神の小屋は、スパイスやら薬味やらといったものでぷんぷんしている。
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引き出しの数は、横十一かける縦八で八十八杯。
ひとつひとつに薬味の名前がしるされたラベルが貼ってあって、それがなんともいい。
字面を見ているだけで、ワクワクする。
で、この引き出しを何に使っているかというと、いまのところは、
顆粒(かつおダシ、鶏がら)とか、かつお節とか、ダシ昆布とか、お茶とか、胡椒とかの在庫を
入れたりしている。なにせ八十八もあるので、ほとんど空。
いずれ、この百味箪笥がスパイスでいっぱいになるときがくるだろう。

スパイスにはさほど関心がなかった。カクテルに関心がないのと同じように。
おれが急にスパイスがかってきたのは、春の終わりから夏にかけてだ。
Sun Ra漬けの夏。SPACE IS THE PLACE SPACE IS THE PLACE、、。呪文のような。
昼の休みに読んでいたのは、ミシェルレリスのアフリカ日記。気分はアフリカ的魔術使い。
色がほしくて、身につけたくて、リネンの古着シャツを買いまくって、
いろんな色の石を買いあさって、
赤いものにハートが揺さぶられてしようがなくなって、トウガラシが無性に恋しくなって、
カレールーでカレーをつくりながら
そういえばこのカレー粉っていうのは何でできてるんだろうかとか気になりはじめて、
シナモン、レモングラス、コリアンダー、クローブという単語を見聞きしてると、
どうにもそわそわしてきて、もっと辛さを!なんて心のなかで叫びはじめて、
チリソースとかハバネロソースとかが台所に並ぶようになる。
じつは、スパイスがかるちょっとまえに、
ユングが来ていた。サイコロジーよりも、オカルティズム。赤の書のほう。
ふたまわりくらいして、ようやくおれもここへ帰って来れたとおもったものだ。
そんなフィーバーでもって蜆TuRe八號の必殺ワタナベ!なんかを書いたりするうちに、
ほんか…