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工場日記2






3時15分から4時50分まで(おおよそ), 金属板で缶を作る. 油を塗り, 心棒に巻きつけ, 打つ. 工具が形を作る.
しかるべき側に溶接する. 終日そして昨日も立ち仕事で, へとへと. 動作はのろのろ. この缶は鋳物〈ボイラー〉班
の仲間で溶接して作った, と思うとうれしくてたまらない. この仕事のあいだ, ひとりの病気の女工を支援する募金.
1フランだす. だが, 班長はなにもいわない.時間賃[率]との差[額]は0.90フラン

10時から11時まで, 型版〈カルトン〉(その後もつづける). たやすい. やらかしそうな唯一の失態は, 詰めこみすぎ.
なのに, みごとにやらかした! レオンに罵倒される. 50サンチーム. 0.5%. 425個仕上げる. 稼ぎは2.12フラン.
記録は45分. 10時の支払は115フラン. 手当は36.75フラン. 時間賃率との差額合計は, 0.25フラン+1フラン+
0.95フラン+0.25フラン+0.90フランで, 合計2.50フランになる(この程度なら工場はつぶれまい……)

〔シモーヌ・ヴェイユ『工場日記』1935年1月2日から5日まで より〕


去年の夏、蜆TuReの印刷費とデザイン料を捻出するため、郵便局でゆうパックのバイトをした。
週5、午前6時から10時までの実働4時間。
ヴェイユ熱にほどよくおかされていたころで、つねにみすずの『ヴェイユの言葉』を手に持って出勤していた。
歩きながら本を読むという習慣を身につけたのは、前の前の年末に郵便局でバイトをしていたころ。
ひと月のあいだの行き帰りで、大江健三郎の『芽毟り仔撃ち』と遠藤周作の『沈黙』とリルケの『マルテの手記』を読了した。
それはさておき。
工場日記に打たれ、「ヴェイユも労働しているのだから」という理由だけを後ろ盾に、毎朝現場に向かっていた。
6時前になると蝉が鳴きはじめた。心地よい夏の朝の空気を吸いながら歩く道すがら。労働を水のように飲み干そうとしていた。
30kgの米、ゴルフバッグ、業務用の飲料水、ビール瓶1ダース、バカでかい電化製品、大量のうずら卵。
パレットの上で、虫籠に入ったスズムシが鳴いていた。
人間五人くらいは乗れる牢獄のような大きな金属のパレットに積まれた荷物を、地区ごとにパレットに区分けしていく。
ゆっくりやろうと思えばいくらでもできる。だが、アルバイトに従事する上でのぼくの精神は「ベストを尽くせ」。
できるだけ迅速に仕事をこなし、パフォーマンスを高めたい。
重たいものから積極的に運び出す。たかだか数メートルの距離の移動だが、何せ暑い。
現場には冷房も扇風機もない。配達員が出たり入ったりするので、ドアはほとんど開きっぱなし。
ものの30分で汗だくになる。
そのときはガッツでやってのけるが、万年引きこもりの身にはさすがにこたえる。
勤労開始から一週間は、毎朝、関節に痛みをおぼえながら体を洗っていた。その仕事を、ひと月やり遂げた。

「労働」という言葉を、「食事」と同じレベルで使うようになったのは、この夏からである。
そして、いま、また新たな労働に従事している。

夏のゆうぱっく労働は、いまの現場においても、労働精神として大いに役立っている。
が、労働者としての現在の自分をより根本的に下支えしている経験が二つあって、
ひとつは京都での二年間の会社員生活(2009年9月〜2011年8月)と、もうひとつは
一年間やった内職バイト(2015年9月から2016年6月)。
京都時代は話すと長くなるので割愛するが、
ぼくの働き人としての骨法のほぼすべてはここでつくられたといっても過言ではない。
とっとと内職の話に移ろう。
内職は、出来高制で単価は雀の涙だ。
主に、モロゾフやシャトレーゼやアンテノールなどのチョコレートの箱を組み立てる仕事。
ヴェイユの工場日記を真似て、試しに手元にある請求書控を引き写してみよう。



H27年9月30日
品名        数量  単価  金額(税抜・税込)
大丸5点      2000  1.30  2,600
PT1000       599  1.80  1,079
プチBag      1000  1.50  1,500
プリエール     600  1.50   900
カネボウ
(穴あけシール)  3980  1.20  4,776
カネボウ14     600  1.50   900
計 11,755


H27年10月30日
品名        数量  単価  金額(税抜・税込)
アスカ       200  5.80  1,160
ブーケド800
(フタ)      799  1.30  1,039    
ブーケド4800    200  3.50   700
プリエール     599  1.50   899
ショコラリデ350
(フタ)      1593  3.20  5,098
ショコラリデ900
(フタ)      1000  2.60  2,600
ショコラリデ600 
(み)        598  2.00  1,196
計 12,692


H27年11月30日
品名        数量  単価  金額(税抜・税込)
ロングライフ1点  2000  0.60  1,200
ハウステンボス
(フタ)      394  2.80  1,104
アニマルD―K    778  3.00  2,334
ショコラリデ1200
(み)       996  2.30  2,291
ブーケド 2800    197  4.00   788   
計 7,717


H27年12月31日
品名        数量  単価  金額(税抜・税込)
ふろしき
(上箱)      399  6.50  2,594
ロングライフ1点  3000  0.60  1,800
全労済      1000   1.50  1,500
マローネ4
(シール)     600  4.00  2,400
ハウステンボス
(フタ)      400  2.80  1,120
ミルク1000     598  2.00  1,196
PT1000
(フタ)      1191  1.20  1,430
PT1000
(み)       1200  1.80  2,160
計 14,200


H28年1月30日
品名        数量  単価  金額(税抜・税込)
ミルク 500     1000  1.80  1,800
PT1000
(み)       1792  1.80  3,226
プリエール      593  1.50  890
青汁        1000  1.00  1,000
仏光殿       2000  1.30  2,600
計 9,516


H28年2月29日
品名        数量  単価  金額(税抜・税込)
大丸5―4丁合1点   2000  1.30  2,600
大丸6―5丁合3点   600   1.60  960
G20         100   7.00  700
計 4,260


H28年3月31日
品名        数量  単価  金額(税抜・税込)
ヒモ        1000  2.00  2,000
ロングライフ6点   1600  1.30  2,080
社保7点       987  1.50  1,481
G15         200  5.00  1,000
ウエキ3点宛名    1496  2.00  2,992
計 9,553


H28年4月30日
品名        数量  単価  金額(税抜・税込)
ロングライフ2点  3000  0.80  2,400
シュゼット
(み)       200  2.00  4,000
計 6,800



H28年5月31日
品名        数量  単価  金額(税抜・税込)
ヒモ       2000   2.00  4,000
計 4,000


こうしてみると、チョコ箱のほかにもいろいろやっているのであった。
それはさておき。
こうしたある程度の量をこなす手作業をするにあたって、効率化とスピードアップをはかるには、
どうすればよいか。内職を通じて、ぼくはそのコツを学んだ(教えてもらった)
それは、「同じ動作」を「一定のリズム」で行うということ。
たとえば、箱をつくるとき、折り目を折った後に組み立てるのだが、
一個ずつ折って組み立てるのでは作業効率が悪い。
2000なら2000、1000なら1000で、先にすべての折り目を折り終え、その後まとめて組み立てる方が断然早い。
この手作業における鉄則が、いまの現場にもそのまま適用することができている。昔取った杵柄。
鍵を握るのは「リズム」。
遅くてもリズムを一定に保つことができれば、効率のよさは担保される。ウサギとカメの話と同じ。
リズムを保てれば、テンポがあとからついてきて、おのずと作業スピードが上がっていくのだ。
リズムは力なり。





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続 工場日記

その一 「痛み」

僧帽筋、脊柱起立筋、左三角筋、左手尺骨三角骨靭帯、胸鎖乳突筋…
これまでに労働をつうじて特に試練をしいられてきた主な部位たち。
なかでも胸鎖乳突筋の痛みには完全に参った。
ある夏の晩、寝ちがえる。首に経験したことのない激痛が走る。
数日前から頸部を中心に体の痛みをおぼえていたのであったが、
そこに、Liquorの過剰投与とその後のまずい体勢での寝入りが引き金となり、
トドメを刺されたかたちである。
首を回せない。寸分動かそうものなら、稲妻が走る。
そうなれば蚊の鳴くような声で泣くしかない。咀嚼もままならない。
患部を揉み揉み、なんとか読書ができるくらいまで回復したその日の晩、ふたたび激痛。
いよいよ万事休すと近くに整体院がないかを調べることに。
調べていくあいだに、寝違えのことがわかってくる。
どうも、寝違えというのは、
腋内側に走っている「腋窩(えきか)神経」が圧迫されて起こるようである。
寝違えて頸部に痛みを感じた多くの人は、首を揉んだり横に曲げて伸ばしたりするが、
これは一番行ってはいけないことなのだそうだ。
理由は、頸部の筋肉はいままさに炎症を起こし圧迫されている状態なのであって、
そこを揉めば圧迫に拍車をかけ、さらなる炎症を引き起こし痛みを悪化させるため、と。
やってはいけないことをやれば、治るものも治らない。
何かいい手はないものだろうかとおもいながらさらに調べていくと、対処法なるものを見つける。
腋窩神経を圧迫から解放してあげる有効な体操。

体操1
1. 背筋をのばし脱力。
2. 痛む側の腕を後方へ引き、少しずつ上げる。
(手首はだらりと垂らす)
2. 上がりきったところで、20秒キープ。腕をゆっくり戻す。(2セット)

体操2
1. 痛む側の手を腰に当てる。
2. 肘を後方へ引く。
3. 引ききったところで、20秒キープ。腕をゆっくり戻す。(2セット)

体操3
1. 痛む側の腕を手のひらを上にして肩の位置まで上げる。
2. 120度の角度で肘を曲げ、そのまま水平に後方へ引く。
(体はひねらず腕だけを後ろへ)
3. 引ききったところで、20秒ほどキープ。腕をゆっくり戻す。(2セット)

実際にやってみると、どうしようもなかった首の痛みが引いた。
ただ、いつあの痛みが再発するとも知れないので、しばらくは用心の日々を送ることに。

映像日記

2月14日 水
非番。復調。寒し。
週末ゴダール。インタビューや批評つまみ読み。ドゥボール。situs状況主義。インタビューは何より興味深い。
アンヌ・マリー=ミエヴィルとの共作『Comment ça va?』
ポルトガルで起きたカーネーション革命を下敷きに、「視線」についての考察が中心を流れている。
タイプライターの手を動きと文章を読む目の動きの類比。
視線を司るものは?「文章」。
画面に映し出されるタイポ文字のカーソルの動き。
文章はそれを読む(見る)視線の前で意志を持って動き、視線を監視している。
視線が文章を追うのではなく、文章が視線を追う。
映像を撮ることも映像を観ることも可能
だが、
そこにあるべき「視線」そのものを描くことは(可能かどうかというより)許されているのか?

「最後に、《俳優と観客の間にある映画》というタイポ文字のタイトルが、
 冒頭の《能動と受動の間にある映画》に打ち消された後消去され、
 カーソルだけが空しく動き続けて映画は終わる」(E/M Books 2)

文字を打つ作業と打たれた文字がそこに表象として写し出される現象とのあいだにあるものについて。
「文字を打つという作業」が、打つ人とは別の主体性で、何か別の作業を行っているという仮説に立って。
思考というものがどこから来て、その思考がどのように表象化するのか、
どのようにそれが可能なのかということについての考察へ。
司るものがあるとして。
それは打つ人の内部に?写し出される文字の側に?あるいは作業をする手に?
文字の(カーソルの)動きのほうに?
いずれもそうであってそうでない。
なぜならば、いずれかが司っているということはないから。それらは一貫して司られているといえないか。
物としての文字も文字の動きも作業する手も手を動かす意識や神経伝達の部門も、一貫して。
では何によって司られる?
その「何によって(あるいは、どうやって)」を探究する考察の上に哲学があり、
その探究の影響の上に心理学があり、その探究の質的転移(表象化)の上に芸術がある。
作業や現象が、それが可能になっていく(展開していく)過程で一貫して何かに司られているとするならば、
はじめに「受動ありき」ということがいえるのである。
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工場日記1

毎朝、9時15分過ぎに工場の門をくぐる。
やれやれ、という感じでいつも。
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タイムカードを押し、裏口から現場に入る。
配送業者が入荷した荷物を台車に積んでいる。
高く積まれたダンボール箱の壁を抜け、作業机の前へ。
荷物を足元に置き、鋏を道具棚から取り出し、
さてさてと手をさすりながら、仕事をとりにいく。
今日出荷予定の荷物の山から個口の大きいものを選び出し、
そいつをよっこらせと持ち上げて、持ち場へつく。
箱をあけ、中身を取り出す。
平均して一箱にだいたい40ヶから50ヶのモノが入っている。
箱の大きさによって異なるが、多いときは70ヶ。数十ヶの場合もある。
さっと検品しながら判型ごとに分けて机に置いていく。
数を数え、記録し終えたら、おもむろに椅子に座る。
ではまいります、と心のなかでつぶやきつつ、鋏を手に取る。
作業開始。
1ヶにつき切るべき箇所は4点。そこへひたすら鋏を入れていく。
切り取られた部位は、残骸となって足元に落ちていく。
鋏はピストル、そして残骸は空の薬莢。
黙々と、かつスピーディーに鋏を入れていく。
一日に何千という総数をさばく必要があるので、おのずとスピードが求められる。
ただ実際のスピードには個人差があり、判型によってもかかる時間は異なる。
私の場合は、だいたい1ヶにつき15秒から20秒といったところか。
4ヶで1分。40ヶで10分。検品に5分。作業後の判型揃えに5分。
一箱当たり、ざっと20分かかる計算である。
作業を終えたモノはつど所定の位置まで運び、すかさず次の箱に取りかかる。
この作業をひたすらつづける。

この4点切りの工程を作業Aとすると、
これとは別に、判型ごとに寸法を取り出す作業Bと、仕上げの工程に当たる作業Cとがある。
作業ごとにそれぞれ部隊があって、作業Cだけ素人とプロの二集団に分かれている。
作業AとBは、作業Cの前準備に当たる。ここで時間がかかると、作業Cにシワ寄せがいくので、
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